桜(さくら)
日本の国花、古くから愛されてきた代表的な春の花。春を連想させ芽吹くことから、物事の始まりでとても縁起が良い。最近は、国花ということで、通年の柄として用いられる。
牡丹(ぼたん)
姿の美しさと豪華さから百花の王と呼ばれて、多くの花の中で最も存在感のある花。幸福、富貴などを意味する。
奈良時代に中国から日本に伝わった。
蝶(ちょう)
さなぎから蝶に羽化する様子から、「復活、変化」「不老不死」意味。「長」の音から、「長寿」などの意味がある。
雪輪(ゆきわ)
六角形の雪の結晶をモチーフにした吉祥文様。雪は冬の景色の美しさのシンボルとされ、また、豊作をもたらすと信じられたことから吉兆を表す文様とされた。
青海波(せいがいは)
波を扇状の形に描き表した模様。どこまでも広がる大海原に絶えず繰り返される穏やかな波のように、平穏な暮らしがいつまでも続くように、という願いを込めた吉祥文様である。
橘(たちばな)
橘は、みかん一種。理想郷である常世国(死者の行く永遠の世界)からもたらされる果実である。
永遠の繁栄や長寿の象徴として、婚礼衣装から礼装用の文様に多く用いられる。
萩(はぎ)
秋を代表する植物で、秋の七草の一つ。
夏から秋にかけ、紅淡色や白い小さな花をつける。丸い葉は三つの小葉に分かれる。
菖蒲(しょうぶ)
「あやめ」とも言う。初夏に、黄色の細花が密集した太い穂を出す。葉は剣の形で、香気が強いので邪気を払うとされ、五月五日の節句には、魔除けとして種々の儀に用いられる。勝負、尚武(武士の心得)と同音のため、 武人に特に好まれた。
桔梗(ききょう)
キキョウは東アジアに広く分布する多年草。日当たりのよい草原に見られるが、国内ではそのような場所が激減したため絶滅危惧種になっている。
古来より美しい花が人々に愛され、万葉の時代から観賞されていた。
菊(きく)
奈良時代に中国から日本に伝わり、中国の伝説*にちなみ、長寿を象徴する代表的な植物。吉祥模様として通年好まれる。
*中国の黄河源流にある菊の群生地から流れ出た水を飲んだ人が延命を得た、「菊水」の伝説がある。
梅(うめ)
2月頃から厳寒の中で、ほかに先駆けて咲く香り高い花であり、縁起のいい花とされる。5枚の花弁のある花を葉に先立って咲かせる。花の色は白、またはピンクから赤。
松竹梅(しょうちくばい)
松:冬も緑が変わらないことや、樹齢が長いことから、吉祥の木とされる。
竹:根を強く張り、しなやかで強くまっすぐ伸びる竹は、古くから神聖なものとされてきた。めでたい模様。
梅:厳寒の中で、ほかに先駆けて咲く香り高い花であり、縁起のいい花とされる。
霞(かすみ)
自然を表す模様として、とらえどころのない霞を昔から日本的な感覚で模様化している。
気象の変化の豊かな日本では、波や雲、雪や霞など、とらえどころのない自然現象までも美化してみごとに模様として表現している。
宝尽くし(たからづくし)
いろいろな宝物を並べた縁起のよい吉祥模様。
(1)打ち出の小槌(うちでのこづち):人の知恵を現す
(2)巾嚢(きんのう):経済を表し、お金に不自由しないようにという意味
(3)丁子(ちょうじ):香辛料の一種。大変高価なもの、黄金と同じ価値
(4)巻軸(まきじく):ありがたいお経が書かれたもの
(5)分銅(ふんどう):バランスを表す
(6)隠れ蓑(かくれみの):それを身につければ身を隠すことができるという
(7)七宝輪:人と人との輪
(8)隠れ笠(かくれがさ):かぶるとからだが見えなくなるという笠
(9)宝珠(ほうじゅ):宝の珠
紅葉(もみじ)
紅葉は秋をあらわす模様としては欠かすことのできないもので、古くより文様として用いられてきた一つ。紅葉をみて夏に疲れた体に生気を取り込もうとする。
楓が紅葉すると紅葉なる。蛙の手に似ていることから「蛙手」と呼ばれ、蛙は「還る」に通じる。60年生きて再び生まれた年の干支に還ることを還暦というように、楓は長寿をあらわす。
鼓(つづみ)
和楽器の小鼓の形を模様化したもの。きものや帯に、胴のくびれた小鼓が優雅な形に染めや織りで表現されている。
鹿の子(かのこ)
小鹿の背の斑点を模様にしたもの。鹿は“神の使い”ともいわれ、縁起の良い動物といわれている。 また鹿は、生命力や繁殖力に優れることから、延命長寿の象徴としてされてる。鹿の子絞りは気が遠くなるような手間と技が必要で大流行した江戸時代前期には総鹿の子は奢侈禁止令の対象となった。
御所車(ごしょぐるま)
平安時代に、貴族の乗り物として用いられた牛車。古典的で雅な王朝文化を象徴する模様として用いられる。
『源氏物語』の世界を象徴する雅なものとして源氏車とも呼ばれる。
亀甲(きっこう)
正六角形の幾何学模様。亀の甲に似ているのでこうよばれる。
平安時代に定着しためでたい柄。
七宝(しっぽう)
同じ大きさの円を1/4ずつ重ねていく模様。七宝とは仏教の言葉で、金・銀・瑠璃・はり・珊瑚・瑪瑙・しゃこ、の七つの宝物を意味する。
自分を取り巻く人の輪が、四方八方に広がり、目に見えない人の繋がりや信用は、目に見える宝と同じ価値があるという意味もある。
鎧縅(よろいおどし)
昔、武士が身につけた鎧に用いられたもの。配色の美しさから、品格のある模様として使われる。
立涌(たてわく)
水蒸気が立ちのぼる様子を模様化したといわれる。
平安時代以降、身分の高い人の装束に使われてきた格調高い模様。
観世水(かんぜみず)
曲線で表した流水文様の一部に渦巻を加えたもの。常に変わりゆく無限の様を表わす。
能楽の観世流という流派の模様に由来する。
格調ある模様として広く使われる。
紗綾形(さやがた)
卍の先をつないだもの。中国では万を表すのに卍を使う。よろこばしいことがいつまでも続くようにという意味で婚礼衣装の生地の模様にもよく用いられる。
兜(かぶと)
武将が頭部を防護するためにかぶった武具。勇壮な柄。
花菱(はなびし)
四菱を構成する各片を、花弁のように表現したもの。
格調高い模様としてよくみられる模様。
紐飾り(ひもかざり)
組み紐を美しい形に結んで、衣服や器具につける装飾。
笹(ささ)
笹の葉や枝などを図案化したもの。
竹ほど背は高くならず、茎もかなり細いのが特徴。竹と同様、めでたい模様である。
扇(おうぎ)
扇は広げると末広がりになることから、繁栄・開運の吉兆とされる。
神霊を呼び起こして、福を招いたり、邪悪避ける力を備えた道具ともされた。
鶴(つる)
吉祥模様。鶴は千年、亀は万年というように、長寿延命の象徴である。立ち姿、舞う姿も優雅で気品のある鶴は、古来から愛されてきた鳥。
桐(きり)
帝王を象徴する鳳凰が桐の木に棲むとされているため、桐は高貴なものとされた。5月、6月に紫の花を咲かせるが、 吉祥として季節に関わりなく用いられている。
藤(ふじ)
藤の花は4月から5月頃に、紫色または白色の花が房状に長く垂れ下がる優雅な花で、平安時代より文様として多種多様に描かれてきた。
いつまでも美しく、子孫繁栄の意味もある。
椿(つばき)
古くから、悪霊を払う力があると考えられ、春を告げる聖なる木として好まれてきた。着物の文様としては、吉祥の意味もこめられている。
竜(りゅう)・龍(りゅう)
中国から伝わった想像上の動物で、めでたいしるしとされる。体は大蛇に似て、背に八一の鱗(うろこ)があり、四足に各五本の指、頭には二本の角があり、顔が長く耳を持ち、口のあたりに長いひげがあり、喉下(のどもと)に逆さ鱗を有する。水に潜み、空を飛んで雲を起こし雨を呼ぶ霊力があるとされる。
鷹(たか)
古来、姿に威厳のある鳥とされる。力強さ、勇ましさの意味をもつ。鷹は鋭いくちばしや爪をもつ雄々しい鳥の代表である。大空を飛ぶ勇壮な姿を象徴している。
格子(こうし)
格子縞ともいい、縞柄のひとつ。建具の格子にちなむ呼び名。縦と横の組み合わせで多様な柄がある。
蔦(つた)
蔦の絡まる様子から、盗難よけとして選ばれた。また、生命力の強さから、子孫繁栄、縁起のよい植物として多く使用される。
特に唐草模様は一族の繁栄や長寿を意味する、縁起がよい吉祥文様として愛されてきた。
雲文(うんもん)
雲がたなびいている様子を線や色で表した文様。
千変万化する雲の形に吉凶の意味を託す。優美な趣がある。
波(なみ)
変化する波の様子を文様化したもの。
大波、小波、荒波など数多くの種類があり表現も多様。無限に広がる波に未来永劫や永遠の平安の意味が託されている。
檜垣(ひがき)
檜垣は檜の薄板を斜めに編んだ垣根のこと。その網目の形を文様化したもの。
籠目(かごめ)
竹かごの規則正しい編み目を文様にしたもの。目を連想させる籠目模様は鬼が嫌うという迷信があり、魔よけのために浴衣の模様などに用いられた。
三つ巴(みつどもえ)
巴を三つ組み合わせて円形にしたもの。
巴(ともえ):元来渦巻から展開した模様と思われる。象形文字の蛇がしだいに変化してできた形という説もある。これは中国、朝鮮はもとより、中央アジア、スキタイ、ギリシアなど広い地域に分布する模様である。
松皮菱(まつかわびし)
大きい菱の上下に、小型の菱をいくぶん重ねるように取り付けた文様(松の樹皮の割れに似たところから)。
唐草(からくさ)
古代オリエント、ギリシャなどに起源をもつ。日本へは古墳時代に中国から伝来した、つる草模様としてとらえられ、愛好された。地を這うように伸びるつる性の唐草は強い生命力を発揮するものとして尊ばれ、松や菊、梅などつるを持たない植物にもアレンジされ、発展してきた。
和太鼓(わだいこ)
日本の伝統的な楽器のひとつ。
楽器は、神事などに由来するものが多い。
竜笛(りゅうてき)
雅楽(ががく)用の竹製の横笛。
楽器は、神事などに由来するものが多い。
鳳凰(ほうおう)
古代中国の思想にもとづく、空想の動物。現れると、天下安泰(てんかあんたい)につながるといわれる。飛鳥時代から日本の工芸品にも描かれるようになった。
軍配団扇(ぐんばいうちわ)
中世末から近世、武将などが用いた指揮用の具。団扇は道教の八仙の一人である鍾離権(しょうりけん)の持ち物で死者を蘇らせる神通力があったということからめでたいことが起きる前兆の意味がある。
宝珠(ほうじゅ)
如意宝珠(にょいほうじゅ)ともいい、金銀財宝など望むものを意のままに出すことのできるといわれる不思議な宝の珠(たま)。丸くて先が尖っており、その先端と両側から火焔が燃え上がっているように描かれる。
流水(りゅうすい)
水は古来、神聖なものとして扱われてきた。自然豊かな日本の自然とともにあり、流れる水を優美にあらわしたもの。千変万化する姿が様々に模様化されている。流れる水は濁らず常に清らかであること、苦難や災厄を流し去ることから、吉祥文様の代表として挙げられる。
宝鑰(ほうやく)
財宝を守る鍵。先端が雷文形に曲がっているのが特徴。縁起が良い福徳のシンボルでもある。
火焔太鼓(かえんだいこ)
舞楽用(ぶがくよう)の大きな太鼓。音色が大きく美しく鳴り響く様子から、神に伝える為の良い方法とされ、楽器が「良く鳴る」と、物事が「良く成る」と掛けて吉祥文様として描かれる。
宝相華(ほうそうげ)
インドから唐を経て天平の頃に仏教とともに日本に伝えられた空想の花。牡丹や芍薬などの美しい花の部分だけをくみあわせてつくったともいれる華麗な花模様。仏教の装飾としても用いられる。
宝船(たからぶね)
宝物を積んだ船。宝尽くしや七福神を乗せた帆掛け船。
また、それを描いた絵に「ながきよのとをのねぶりのみなめざめなみのりぶねのおとのよきかな」という歌(上から読んでも下から読んでも同じ歌)を書き添え、正月二日の夜、枕の下に敷いて寝ると吉夢を見るという。もし、悪い夢を見たときは翌朝この絵を川へ流すという。
毘沙門亀甲(びしゃもんきっこう)
亀甲の変化形。三つの正六角形をつなぎ隣接する辺を消して、輪郭だけで構成した形。仏教を守護する四天王(してんのう)の一人、毘沙門天の鎧(よろい)の模様表現からきた呼び名である。
市松模様(いちまつもよう)・石畳文(いしだたみもん)
色の違う正方形を上下左右に交互にしきつめた模様。平安時代から用いられており、江戸時代に、歌舞伎役者・佐野川市松が愛用した模様。
菱(ひし)
池沼に生える水草の実の形をもとにした、植物模様のひとつ。縄文土器にも例があり、古くから模様として用いられていた。
幾何学模様を代表する文様のひとつとして、陶磁器などにも幅広く用いられる。
露芝(つゆしば)
中央でふくらむ線弧を芝と考え、重ねたり、散らしたりして描き、それに露の小玉を点々と散らした模様。
手毬(てまり)
子どもの玩具(がんぐ)。江戸時代には装飾的な手毬が作られ流行した。子供や女性の帯に見られる。
切金(きりかね)
衣服などに、細長く切った金や銀の箔が用いられ、繊細華麗(せんさいかれい)な文様を描き出される、その技法が模様化されたもの。
若松(わかまつ)
松の若木のこと。若松は正月の飾りに用いられ、新鮮さと将来性のある植物としてめでたいものとされる。
矢絣(やがすり)
本来は矢羽模様の絣を指していた。江戸時代に、結婚の際に矢絣の着物を持たせると出戻ってこない(射た矢が戻ってこないことから)といわれ、縁起柄とされ、小紋などにも矢羽模様が使用されるようになり、矢羽模様をさして「矢絣」と呼ぶようになった。
花喰鳥(はなくいどり)
ササン朝ペルシャ(224-651年に西アジアにあった国)に起源をもつ。古代の人々にとって、鳥は楽園から飛来して、幸福を運ぶという吉祥の意味をもち、鳥がくわえる花枝は、幸福の象徴だった。
松
冬も緑が変わらないことや、樹齢が長いことから、吉祥の木とされる。
竹
根を強く張り、しなやかで強くまっすぐ伸びる竹は、古くから神聖なものとされてきた。めでたい模様。